株式会社東豆

『インフルエンサー』(三建だより コラム「小窓」) 2020-02-01

『フジサンケイレディスクラッシック』
国内屈指の名門「川奈ホテルゴルフコース」で開催される女子プロゴルフツアーの一戦。
昨年4月、平成最後の女王の座をかけたこの試合をテレビ観戦していたときのこと。
白熱したラウンドの中で見慣れない選手が一人白い歯を見せて笑っています。

解説者によれば、
「黄金世代の一人ですけどね、まだプロテストに合格したばかりの二十歳。
優勝争いに食い込んでくるとは立派ですね」

たしかそんなニュアンスでした。

女子プロ界を席捲している「1998年度生まれの選手たち」は『黄金世代』と呼ばれています。
がしかし、
この選手のことは知りませんでした。
結果2位となったこのプレーヤーが渋野日向子選手だったのです。

その渋野選手、
翌月にはツアー初優勝、
7月に2勝目をあげ、
なんと8月には世界メジャー大会のあの全英オープンを制することに。
その間わずか数か月。
「一気にスターダムを駆け上がる」とはまさにこのことを言うのでしょう。

川奈から全英オープンまで、
テレビとはいえリアルタイムでその過程を観ることができ、
その躍進のさまを「同時体験」をしているようなワクワク感がありました。
特に全英OPでウイニングパットを決めた瞬間は得も言われぬ衝撃を覚えたものです。

となりのまち伊東市川奈を「起点」として、
無名選手のシンデレラストーリーを同時体験できた幸運。
一方で、
自分はまだ無冠の頃から注目していたのだという先取りの優越感。
これこそファン心理の典型。
もっとも、
同じような人たちが全国に何千人いや何万人といらしたかと思いますが。
 
そんな「シブコ・フィーバー」の次にはラグビー日本代表の活躍が待ち構えていました。
実をいうとワールドカップ開幕百日前イベントの一環として、
ラグビーマガジンの編集長とトップリーグ元監督との対談を拝聴する機会があったのです。
ラグビーというスポーツに深く触れたことのない私にとって、
大会にまつわる話題から選手名まで恥ずかしながらその内容がさっぱりわかりませんでした。
それがのちにこれほどまで日本中を沸かせる大会になろうとは。

今までラグビーといえば汗臭くて痛そうなスポーツ(失礼)という勝手な感想しかなかったものが、
きわめて緻密で美しく、
精神性の高いスポーツであることを知ったわけです。

リーチ・マイケル、松島幸太朗とさらりと口に出せる今、
もう一度巻き戻して対談を聞けたらさぞや腑に落ちたのになあと悔やまれます。
  
ところで近頃『インフルエンサー』という言葉をよく耳にするようになりました。
もちろん流行感冒ではありません。

SNSマーケティングの世界を中心に、
他者の購買行動に強い影響力を及ぼす人物のことで、
インスタグラマーだとかユーチューバーだとかブロガーといった人たちの総称です。
その手法を説明するには、
カリスマと言い換えればわかりやすいかもしれません。
例えばカリスマがSNSで発信する情報を企業が活用して宣伝し、
カリスマは広告料をはじめとした収入を得るという仕組み。

もはやユーチューバーは日本や中国の若者がなりたい職業の上位に定着したそうですが、
逆説的には自身が有名人やカリスマにならなければいけないわけです。

これをスポーツ界で例えてみれば、
ゴルフの『黄金世代』やラグビーの『桜戦士』は、
望むと望まざるとにかかわらず、
多くのフォロワーと絶大な影響力を持つトップレベルの『インフルエンサー』ということになります。

そしてスポーツ界の『インフルエンサー』は、
競技の本質や醍醐味を直接伝えてくれるわけですから、
その存在が大きいほどそのスポーツの注目度が高くなるという、
ある種の“業”を背負っているのだと思います。

東京五輪が間近にせまりました。
オリンピック33競技、
パラリンピック22競技、
多くの種目で世界標準のパフォーマンスが繰り広げられるのは五輪ならではです。
日本のゴルフやラグビーが世界標準であることを見せつけた昨年の良い流れに続いて、
日本ではあまり注目されていなかったスポーツが『インフルエンサー』の出現によって脚光を浴び、
国内に根付くことを期待しています。
特に伊豆で開催されるサイクルスポーツの『インフルエンサー』の登場を楽しみに。




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