株式会社東豆

『熱海ブランド10周年』(三建だより コラム「小窓」) 2020-11-01

『熱海で愛される商品をお土産に』をキャッチフレーズに、
地元商工会議所が立ち上げた「熱海ブランド認定事業」が今年で十年目を迎えました。

ブランド名は「ATAMI COLLECTION A―PLUS」。
熱海市内で生産・加工された食品が対象です。

発足時から、
熱海在住で世界的ソムリエの田崎真也氏を特別招聘審査員として招き、
食の専門家を中心に構成された審査会のもと、
この十年間に222の商品がエントリーし、
そのうち116品が認定されています。

認定率は52パーセントとなかなか厳しい結果ですが、
さらに6年に1回の再認定審査制度などもあり、
現時点ではスイーツから干物まで、
45事業所による82品を擁したコレクションとなっています。 

ちなみに、
4年前に新しくなった熱海駅ビルには、
ブランド認定品のみを取り扱いするショップが同時オープン。
3.3坪と決して広くない売り場にもかかわらず、
開店以来の年間売上は右肩上がりで、
昨年8月の月間売上は過去最高の964万円を記録しています。

先日、
そのブランド認定事業10周年を記念した田崎真也さんの講演を拝聴しました。
なかでも印象深かったのが「スローフード運動」についてのお話。
この運動、
もともとは1980年代、
イタリアの若者がワインや郷土料理を好まなくなり、
加えてゆっくり会話しながら食事したり、
最後に皆で歌を唄ったりという伝統的食文化を避ける傾向があり、
その危機感から始まったそうです。

時を経て、
160ヵ国以上に広まり国際的展開となった際に「GOOD、CLEAN、FAIR」のスローガンが掲げられます。
日本語にすればそれは「おいしい、きれい、ただしい」。

具体的には、
「美味しく風味があり、新鮮で感覚を刺激し、満足させること(GOOD)」、
「地球資源、生態系、環境に負担をかけず、人間の健康を損なわずに生産されること(CLEAN)」、
「生産から販売及び消費にわたって、全ての関係者が適正な報酬や労働条件にある社会的公正を尊重すること(FAIR)」であり、
[これらの理念に基づく食文化を目指すというもの。

品質保持や顧客満足、
持続可能性や安全性、
さらにはいわゆる“三方良し”や働き方改革など、
食文化に対する理念でありながら、
現代社会のトレンドと密接に結びついていることに大変興味を惹かれました。

それは現在の建設業に通底しているテーマでもあります。
田崎さんいわく、
「今後、熱海の海・生態系・自然を守り、また地域生産者の社会的公正を守ること」とのメッセージを、
認定に挑む事業者に向けて投げかけましたが、
それは同時に建設業に従事する者へのメッセージでもあり得たのでした。

今後においても、
地産食材を使い、
かつスローフードの理念に沿った新たな商品が開発され、
それがお土産としてだけではなく、
熱海の伝統的食文化である「宴席」にも登場することを楽しみにしたいと思います。