『島の距離感』(「三建だより」コラム) 2000-09-01
他県ナンバー車が少なくなったな…と感じる頃に夏休みが終わったことに気づきます。夏休みを利用した旅行といえば家族やグループが目だっていましたが、はやりの旅行形態として中高年世代の一人旅が増えているそうです。
勤続疲労(?)したお父さん、育児を終えたお母さんが一人旅に出て、非日常の中に身を置きながら新たな自分の発見をする。
そんな旅は少なからず魅力あるものなのでしょう。
さて、この夏は一人旅ではなかったけれど、有志仲間で熱海の海むこうにある「初島」へ一泊してまいりました。
そこは熱海港から定期船に乗って約三十分で到着する、周囲約四㎞・面積四十四ヘクタール(十三万坪)の大きさの島。
暖かい気候、豊富な漁場、約三万坪の松林など自然条件に恵まれ、古くから〝相模灘の真珠〟と呼ばれる島です。
チェックインはオーシャン・ビューのホテル、ただし夕食は知り合いの島民が営んでいる食堂でという変則コースに。
昼はホテルのプールや展望風呂などでリラックスし、夜は超新鮮な魚介類や明日葉(あしたば)の天ぷらに舌鼓を打ちつつうまい酒を呑むという、ぜいたくな一日を過ごしました。
ところで、初島にいると、陸からわずかしか離れていないにもかかわらず、「島にいる」という開放的気分と、「海を渡る」という気象条件に左右されざるを得ない不安が交錯します。
それは「高揚感と不安定感」と言い換えればよいでしょうか。
ホテルの部屋でいつものニュース番組をみたのに、次の日に帰宅して「何かニュースなかった?」とつい家人に聞いてしまう。
海を挟んだ島と陸との微妙な距離感がそんな不思議な錯覚を引き起こすのでしょう。
こんな非日常を味わえるスポットが近場にあるのはとてもありがたく思います。
一方で、近隣の伊豆諸島で続いている地震や噴火。
初島を訪れたからこそ、島での自然災害に現実的な恐れと畏怖抱きながら夏の終わりを迎えています。