反射炉への道

5月、韮山反射炉が世界遺産登録に向けてイコモスから勧告を受けた、という記事が紙面を賑わせた。「ん、勧告ってなんだ?」と思ってしまったけれど、それは世界遺産登録に向けてユネスコの諮問機関からお墨付きを頂いたようなものらしい。 登録決定がいよいよ現実味を帯びてきた。

謎かけよろしく、「アナタにとっての韮山反射炉は?」と問われれば、「雨上がり、ランニング、キツい」と答える。

時は今からさかのぼること三十年と少し。 反射炉からほど近い高校の生徒だった私。 野球部に所属し、練習は毎日それなりにだった。 この部活、雨上がりでグラウンドが使えない日は、校舎内で筋トレのあとに反射炉目指してのランニング、というのがお決まりのパターン。 片道約3キロのショート・コース。 若かりし部員たちにとっては、ほぼ「半ダッシュ」状態でスタート。 そして、ゴールは反射炉わきの坂道を500メートルほど上った地点。 順位を決めるわけでもないのに、後方集団で終わりたくないという心理が働くのが運動部員たちのサガ。 そのサガを見透かしたかのような、最後のサカが何とまあきつかったことか。 今思うとよくできたコースだったなあと感心するけれど、反射炉はそんな私たちを見守るかのように屹立していた。

さて、世界遺産の話題が賑やかになれば、「韮山反射炉ってどこ?」と全国津々浦々でググられることになるだろう。 実は私の住む南熱海から韮山反射炉までは、「山伏峠」を経由する県道を利用すれば30分弱でたどり着くことができる。 伊豆の東玄関口付近には他にも「熱海峠」「亀石峠」などを経由する道路があり、「背骨」といわれる伊豆縦貫道に通じる「ろっ骨道路」群が韮山反射炉へといざなうため、意外にも便利なのだ。

同時に、観光アクセスについて話題を集めやすい今だからこそ、「災害時道路」としての機能を一層高めていく必要がある。 東日本大震災で「櫛(くし)の歯作戦」による道路啓開が効を奏したと同じく、伊豆地区では「ろっ骨」県道がその役割を担うはず。 加えて、伊豆東海岸とほぼ平行に走る伊豆スカイラインは、はからずも最近の噴火警戒で注目を浴びてしまった箱根山に通じており、県境を超えた緊急輸送路としての役割を果たすことができる。

こと防災に限っては地域間競争にあらず地域間連携にあり。

学生時代に走ったコースの道しるべに等しく、 韮山反射炉が地域と地域をつなぐランドマークであってほしいと願う。

韮山反射炉の全景
韮山反射炉 — 写真:Wiiii / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)