電動自転車に未来はあるか
「熱海っ子って自転車に乗れないんだって?」今でも時々あるこの問いかけ。 急坂が多くて起伏に富んだ地形の熱海では、通勤通学はおろか優雅なサイクリングを楽む道幅もなく、こんな揶揄をされがち。
そこで、今回スポットを当てるのが電動アシスト式自転車。 搭載したモーターによりペダルを踏む力を低減させることができる自転車である。
熱海市観光まちづくり・防災まちづくり推進事業では、「パーク&サイクル」をキーワードに、昨年度より社会実験を行なっている。 先日、ものは試しということで、熱海建設業協会々員による試乗及びルート調査が行なわれ、筆者もその一員だったので体験日誌としてご報告。
<スタート> 去る8月の猛暑日、午前10時に三人一組のチームで熱海市役所を出発。 マイチームは南熱海地区を担当し、往路は網代漁港までの片道約10キロ区間を体験することに。 スタートしてほぼ平坦な道が続き、まずは順調なサイクリング。 その後一キロを過ぎて緩やかな上り坂に突入。 ところが「電動アシスト」にもかかわらず思ったよりキツイ。 ママチャリ並みにペダルが重い。 苦しそうな筆者の様子を見て後ろを走っていた二人が近寄って来た。 「スイッチ入ってないですよ」 こりゃまた失礼しました~。 スイッチを入れたとたん運転が楽ちんに。 ほんとうにフラットな道を走っているようだ。 再出発な気分。
<これぞ醍醐味> 行楽日の渋滞で有名な市内の国道135号沿いもスイスイだ。 路肩走行がとても怖いことを除けば。 景勝地で名高い錦ヶ浦と曽我浦間でパーク(休憩)し水分補給。 普段ゆっくり眺めることのできない景色はまさに絶景かな。 再び走り出す。 赤根トンネルを過ぎるとゆったりとしたダウンスロープにさしかかる。 自転車の醍醐味といえば何といっても風を受けて走ること。 特に下り坂では炎天下にも関わらず爽快さが味わえる。
<予期せぬ出来事> 大きくゆっくりと漕ぐ感じの走法に慣れた頃、最初の目的地である網代漁港へ到着し休憩。 ここからの復路は国道を外れて山間部へ廻るので、電動アシストが更に活躍してくれることだろう。 今度は最後尾にまわっていざ出陣。 けれど、またしてもペダルが重い。 今度はスイッチも入っているのに何故なんだ? 徐々に前の二人との距離が引き離されていく。 突然バランスが悪くなり急停車。 なんとパ・ン・クであった。 近くのガソリンスタンドに駆け込むと幸いにも修理キットが備えてあった。 「港でいいもの拾ってきたねえ」と見せられたのは3センチ長の錆びたクギ。 あろうことか、これからがアシスト君の本領発揮なのにと意気消沈。 山間部の走行は若手のお二人に任せることに。
<ラストスパート> 約30分後、修理を終えて山間部走行隊とめでたく合流。 ところが若い衆、汗だくで疲れ果てている。 「いやーもう走れません」 坂道が相当こたえたようだ。 体力とバッテリーの消耗を考えて寄り道ルートは急遽回避、国道を戻ろうということでラストスパート。 思い切ってトンネルも走行したが、これは「暗い・危険・空気悪い」の3Kだった。
出発から約2時間半、一行はゴールの市役所に無事到着し往復約25キロの旅を終えた。 幸か不幸か山間部を走れなかったのだが、ま、それは次の楽しみにしておこう。
そんなこんなの珍道中だったが、実際に半日走っただけで多くの課題が浮かび上がった。
まずは自転車交換や簡単な修理にも対応できるような、サービスエリアやサイクルポートの開設。 休憩スポットの開拓といった利用者への全面バックアップ。 次に、バッテリー消耗への対応や上り坂でのギア強化など、自転車の性能に対する課題。 これらは需要さえ多くなれば、技術の進化でもちろん解決可能と思われる。
問題はハード面。 特に「観光」という切り口から見れば、あまりに危険が多すぎる。 路肩やトンネル走行時の車との接触危険、あおられ危険、路上駐車をよける際の危険、路面の凹凸による危険、歩道への乗り入れや歩行者との事故など。 これらの課題は自転車専用レーンを作らない限り解決しない。
その一方、伊豆の東海岸沿いを走るラインは、景色が素晴らしいのはもちろんのこと、フラットな地形とあわせてまさに「エコツーリズム」の極致であり、この素晴らしい観光資源を活用しない手はない。 また、同時にアスリート的走行も楽しめる山間部のルートが開設されれば、愛好者の裾野も広がることだろう。 さらに、「防災」という切り口から見れば、修繕・復旧の必要な箇所が詳細に発見できる利点を生かしたパトロールや、災害時の車両通行止区間での使用といった潜在能力を秘めている。
課題は多いけれど、「観光と防災」という目的にぶれることなく一つ一つ解決していけば、電動アシスト自転車が熱海の街を行きかう日はそう遠くないかも知れない。