ミットを動かすな!

北京オリンピックの野球審判団に派遣されたのは、日本からはただ一人。 その方は私の大学野球部時代にお世話になった二学年上の先輩。 オリンピックが幕を閉じ、先輩の帰朝報告が行なわれ、そこで私たちは普段知らない話を続々と耳にした。

ひとつは、世界各地より招集された審判員達から、「お前(日本)のチームが最もマナーが悪い」と指摘された事。

それはたとえば、こんなこと。 ・ 際どいコースに決まった時、捕手がミットをベース寄りに微妙に動かす行為(審判員をあざむく気か!) ・ 投手も打者も総じて間合いが長すぎる(スピードアップ化への反逆か!) ・ 判定に対して不服そうに首をかしげたり、睨んだりする(審判員に対する大いなる侮辱!) ・ ホームランやタイムリーヒットの後に、やたらとしすぎるガッツポーズ(相手チームに対する大いなる侮辱!)

こうした行為が大変不愉快だと、彼らからブーイングを受けたそうだ。 でもああ、これって日本のプロ野球では当たり前、しかも学童から社会人に至るまでのアマチュアが何かと真似てきたよね?

それはキャッチングの技術(フレーミングなんて言いますね)であったり、間合いの変化によってタイミングをリセットするというテクニックであったり、審判へのアピール度を高める行為であったり、チームやファンの士気を高める目的であったり…。 どちらかといえば「勝つための正当な技術」として真似してきたものだから。

日本で当り前と思われている考え方や行為がいかに国際基準と乖離していたか、現地でムチ打たれてきた先輩の話は重かったけれど、見方を変えれば世界各地に拡がっていくスポーツは、同じ競技といえど多様性を抱えざるを得ないのも事実。

柔道の世界では、「一本勝ちの真髄もわからず、今じゃ点取り合戦のJUDOだ」という声が上がる一方、「世界基準の変化に対応できる(つまりポイントを稼げる)者こそが一番強いのだ」と言ってのけ、金メダルに輝いた日本人選手もいるし。

外国人力士が席巻している大相撲では、仕切りの微妙な間合いだとか日本特有のしきたりを伝えることは、親方衆にとっても大変だろうし、その過渡期で角界が揺れているようにもみえる。

スポーツ・グローバリズムとスポーツ・モラル。 選手にとっても審判にとってもいささかハードな時代がやってきた。 どうなる、柔道。どうなる、相撲。